ポーランドの国境警備隊、9,000人近くのウクライナ人の入国を拒否

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執筆:アニタ・カルヴォフスカ Anita Karwowska
『ガゼタ・ヴィボルチャ』 2022年11月28日
https://wyborcza.pl/7,75398,29193076,straz-graniczna-uniemozliwila-wjazd-do-polski-niemal-9-tys.html#S.TD-K.C-B.1-L.1.duzy

初めて国境を越えようとしているウクライナ人も、一時的に祖国に戻って、もう一度ポーランドに行こうとしている難民たちも、入国に問題を抱えている。

「数か月来、ウクライナの市民や、ウクライナ領内に居住する外国人に対して、ポーランドへの入国を認めなかったり、条件をむずかしくしたりする事例の報告を受けている」と、 「法的介入協会」(SIP)は警告する。ポーランドの領土に初めて入国する人びとと、ポーランドや他の EU 諸国でいったん保護を受けてからウクライナに一時帰国した人びとの双方から、この問題についての訴えが届いているという。

この問題について本紙で最初にとりあげたのは、7月のことであった。外国人を支援している SIPには、ポーランドへの再入国を拒否されたウクライナ市民についての情報がますます多く届いている。彼らには、戦争難民への支援にかんする特別法によって帰国する権利が保障されているにもかかわらず、である。

3 月に採択され (7 月初旬に改正された) ウクライナ難民のための特別支援法では、2022 年 2 月 24 日以降にポーランドに入国し、一時的な保護の対象となり、その後ポーランドを出国した人は、 30 日以内であれば、法律で保証されている権利(たとえば、子供 1 人あたり 500ズウォティの追加支援)を失うことなく自由にポーランドに戻ることができることになっている。

「内務省もそのような見解をとっているのですが、国境警備隊が規則を違ったように解釈しているようです。 しかし、そうした解釈は、法律に合致していません。従来、国境ではかなりの程度まで裁量の余地が認められてきました。警備隊員は、国境を越える人びとに大きな権力を行使する状態に慣れていました。ところが、戦争難民のために導入された規則は、彼らの立場を弱めたのです」とSIP会長であるヴィトルト・クラウス教授は説明する。

7月の段階では、SIPはまだ詳細なデータを持っていなかった。しかし現在では、情報公開制度を利用して、国境警備隊からデータを入手している。それによると、3月から9月にかけて、ウクライナとの国境で、国境警備隊の職員は、8,840件の入国拒否にかかわる決定を下したことがわかる。その対象には、ウクライナ市民と他国の市民の両方が含まれる。9 月だけでも、こうしたケースは約 2,000 件にのぼっている。

ほとんどの場合について、国境警備隊は、ビザなしで移動する場合にEU領内での滞在が認められる期間を超過していること、あるいは、有効なビザまたは居住許可の書類を持っていないことを理由として挙げている。国家安全保障に対する脅威とみなされたのは、数名である。国境警備隊の職員は、シェンゲン協定の規定にもとづいて、ウクライナ人のポーランドへの再入国を拒否している。この規定によれば、ポーランドでの90日間の滞在期間を使い切った者は、90日経たなければ再入国ができないことになっている。

SIPの専門家によれば、現在の状況においては、国境警備隊は、ウクライナから来る者に対しては、必要な書類を所持していなくても、人道上の理由から入国を許可する必要がある。協会は、この問題について、国境警備隊に繰り返し申し入れを行なってきた。

さらに50 万人の難民が、ポーランドに避難所を求める可能性がある

今後数週間のうちに、ウクライナからポーランドに入国するための明確な規則が、とりわけ必要となる可能性がある。現在、ポーランドには 100 万人を超える戦争難民がいる。この冬には、ヨーロッパ東部の厳しい冬、激しさを増すロシアのテロ、水・エネルギー・暖房が得られない状況から逃れるウクライナ人がさらに50万人、到着すると推定されている。

人道支援団体は、何か月にもわたる戦争の経験によって心に傷を負い、より多くの支援を必要としている人びとが、ポーランドに避難所を求めることになるであろうと警鐘を鳴らしている。滞在場所を用意すること自体が難しくなる可能性がある。いまなお80,000人の難民が支援施設に滞在しており、その多くが過密な状態で居住している。

【SatK】

ポーランドのドゥダ大統領、プシェヴォドゥフでの爆発について「ポーランドへの攻撃ではなかった。おそらくウクライナのミサイルである」

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執筆:アガタ・コンジンスカAgata Kondzińska
『ガゼタ・ヴィボルチャ』 2022年11月16日 現地時間12:48発
https://wyborcza.pl/7,75398,29146097,prezydent-duda-o-wybuchu-w-przewodowie-to-nie-byl-atak-na-polske.html#S.MT-K.C-B.1-L.1.duzy

「ポーランドを狙ったミサイルではなかった」と、ポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領とマテウシュ・モラヴィェツキ首相は揃って認めた。プシェヴォドゥフに着弾したのはおそらくウクライナの地対空ミサイルの残骸であり、「北大西洋条約第4条の適用は必要ないだろう」とも述べた。

火曜の15時40分、ルブリン県のプシェヴォドゥフ村の穀物集蔵場に、少なくともミサイル1機が着弾した。爆発で2名が死亡した。この日、ロシアはウクライナに最大規模のミサイル攻撃を行なっていた。

ドゥダ大統領 「これはおそらく不幸な事故だ」

水曜朝、ドゥダ大統領は、モラヴィェツキ首相と会談した。直後に行なわれた共同の記者会見で、2人の政治家は「ポーランドへの意図的な攻撃であったことを示すものは何もない」と認めた。「これはポーランドへの攻撃ではなかった。1970年代のロシア製のミサイルS-300型であった可能性が高い」とドゥダ大統領は語った。

「ロシア側がミサイルを撃ったことを示す証拠はない」と大統領は強調した。他方で大統領は、「多くの点で、落下した砲弾が対ミサイル防衛に用いられたこと、この砲弾がウクライナ軍によって用いられたことを示している」と語った。「ロシアからの砲撃、ミサイルが飛んでおり、さまざまな方向から機動性のミサイルも飛んでいた。おそらくその一部はポーランドの領土内を飛行し、東に向きを変えたので、ウクライナの対空防衛部隊はさまざまな方向に地対空ミサイルを発射した。それらの1つが残念なことにポーランド領内に落下した可能性がきわめて高い」と大統領は説明した。

さらに次のようにつけ加えた。「この紛争全体がそうであるように、今回も、われわれは、ロシア側によって引き起こされたきわめて重大な衝突に巻き込まれた。したがって、昨日の衝突全体の責任はロシア側にあることはまちがいない。」

大統領は、現場検証から、ミサイルに搭載された爆発物が爆発したのではなく、ミサイルの落下の力とミサイル内に残っていた燃料の爆発が重なった結果と考えられると述べた。

以上は暫定的な結論であることを大統領は認めた。ポーランドの捜査班はアメリカの担当者と協力して調査を行なっている。「これがポーランドへの攻撃であったと言いうるようないかなる証拠も痕跡も存在しない。これはおそらく不幸な事故であった」とドゥダは説明した。

モラヴィェツキ首相 「平静を保ちましょう」

モラヴィェツキ首相はまず、軍と警察は最高度の警戒状態にあることを認めた。爆発が起こったプシェヴォドゥフでは、人員が増員されている。

「われわれは不幸な出来事に巻き込まれた。ポーランド市民が亡くなったのだから」とモラヴィェツキは述べた。そして、ポーランドの捜査班はアメリカの担当者と協力していることをあきらかにした。「[EUとNATO加盟諸国の]首相たちとの話し合いのなかでとくに共鳴したことを強調しておきたい。昨日はウクライナ全土に大規模な攻撃が行なわれた日だった。ミサイルのかなりの部分がウクライナの都市に飛来し、その一部は撃ち落された。半数とも四分の三とも言われるが、砲弾の一部は撃ち落すことができず、いろいろな場所に命中した。この攻撃に対抗するためにウクライナ軍は対空ミサイルを発射した。そのうちの1つが不幸なかたちでポーランド領内に落下したということを多くの証拠が示している。」

首相は、死亡した2名の家族に哀悼の意を表明した。「ポーランドは同盟のなかにおり、同盟は機能した」と首相は述べた。「さらに段階を上げて、北大西洋条約第4条を適用することは必要とされないだろう」とモラヴィェツキはつけ加えた。

北大西洋条約の第4条には、次のように記されている。「締約国は、領土保全、政治的独立又は安全が脅かされていると認めたときは、いつでも協議する。」

首相は、国境近くの住民たちに平静を保つよう呼びかけた。兵員が増強され、上空の防備も強化されるだろうと説明した。「この事態に平静に対処しよう。これがこの状況に対するわれわれの応答である」と首相は強調した。さらにロシアのプロパガンダへの注意を呼びかけた。「それがクレムリンの目標の1つだからだ。」

バイデン米大統領 「ロシアのミサイルではないようだ」

火曜の夕刻、AP通信と多くのヨーロッパの政治家たちが、プシェヴォドゥフに1ないし2発のロシアのミサイルが落下したと伝えた。上空でウクライナの地対空ミサイルによって損傷していた可能性があるとも伝えられた。

しかし、水曜朝、ジョー・バイデン米大統領は、次のように述べた。「詳しい調査が行なわれるまえに予断したくはないが、[ミサイルの]軌道からみて、ロシアから発射されたものではなさそうだ。」

AP通信も、さきの自社の報道を修正し、アメリカの情報機関の情報として、次のように伝えた。「初期段階の調査は、次のことを示している。ウクライナとの国境のポーランド側にあるプシェヴォドゥフに落ちたミサイルは、ロシアのミサイルに向けてウクライナ軍が発射した地対空ミサイルである。」

16日朝の時点では、ロシアによるミサイル攻撃がNATO加盟国に向けられた可能性を排除できず、ニュースを見ながら背筋が凍る思いだったが、ウクライナ側の地対空ミサイルによる誤爆であることがほぼ確実となった。大統領と首相が両並びで記者会見を行なうのはあまりないことで、ポーランド政府にとって事態が容易ならざるものであったことを示している。

現地のTVは見ていないのでわからないが、オンライン版の新聞を読むかぎりでは、ポーランドのメディアは市民に「平静を保とう」と呼びかけることに主眼をおき、予断や憶測にもとづくコメントは掲載せず、全体として抑制の効いた姿勢をとっていたように思う。

【SatK】

プシェヴォドゥフの爆発の後に、なぜ私たちは平静を保たねばならないのか

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執筆:ミハウ・シュウジンスキMichał Szułdrzyński
『ジェチポスポリタ』2022年11月15日付 現地時間23:18発
https://www.rp.pl/komentarze/art37422581-michal-szuldrzynski-dlaczego-musimy-zachowac-spokoj-po-wybuchach-w-przewodowie

ルブリン県における爆発と2名の死亡は、大きなテストである。ポーランドの政権にとって、政治家たちにとって、情報機関にとって、メディアにとって、そして世論にとって。ロシア側は、すべてを詳しく観察し、そこから結論を引き出すだろう。

プシェヴォドゥフでの爆発の第一報が入った瞬間から、多くの専門家とコメンテーターが、平静と忍耐を保つように、と繰り返し呼びかけている。なぜそのような態度がこれほど重要なのか、説明しておくべきであろう。この点からみれば、この砲弾がポーランドを狙ったものなのか、的を外れたミサイルがたまたまポーランド領内に落ちたのか、はたまた、ウクライナ軍によって迎撃されたロシアのミサイルの破片が落ちたのか、といったことによって、さほど大きな違いは生じない。私たちが確実に知っていることは何もない。私たちが知っていることは、ロシアがウクライナに大規模な攻撃を行なった日に、ポーランドで爆発が生じた、ということだけだ。

他方で、確実なのは、ロシア側が私たちの反応を注意深く追っていることだ。彼らは、軍がどのように動くか、国家がどのように機能するか、世論がどのように反応するかを観察している。誰が冷静さを失うか、誰が挑発に成功するか、そして誰が平静さを保つか、を。そして、疑いなく、彼らはそこから結論を引き出すだろう。もしこうした出来事が私たちの国内の状況を不安定にするために役にたつと認めたならば、クレムリンは、将来の行動マニュアルにそのことを書き込むだろう。もしポーランドとポーランド人が冷静さを保つことができれば、彼らは、こうした出来事は自分たちにいかなる利益ももたらさないことを知るだろう。

西側全体がどのように反応するかを、ロシア側が観察していることも、まちがいない。同盟諸国はどのように反応するか、NATOは、そしてとりわけアメリカはどのように反応するか。最終的には、ポーランド、西側、NATO、国連を含めて、すべての関係者が、この状況とそれに対する反応から結論を引き出すであろう。しかし、そのためにはしばらく時間がかかる。さしあたっては、専門家たちの助言を心にとめて、平静さを保つことが重要だ。たとえ、プシェヴォドゥフで爆発が起こってからこれだけの時間がたってなお、じっさいになにが起こったのかについて、これほどわずかなことしか知らないことが私たちを苛立たせるとしても。

ミハウ・シュウジンスキは、新聞記者・ジャーナリスト。2016年から『ジェチポスポリタ』紙の副編集長。1980年生まれ。ヤギェウォ大学哲学科卒。

【SatK】