「「避難民」なら保護するのか ミャンマーとウクライナ、政府の区別」

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井田純 『毎日新聞』 2022年3月22日 東京夕刊
https://mainichi.jp/articles/20220322/dde/012/030/011000c?cx_fm=maildigital&cx_ml=article&cx_mdate=20220327

ウクライナからの難民を積極的に受け入れているポーランドで、アフリカ・中近東からの難民が排除される現状を告発するルポルタージュを、以前このタイムラインで紹介しました(「ポーランドには2つのカテゴリーの難民がいる」投稿日: 2022年3月17日)。
同様の問題が私たちの国にもあるのではないかと考えさせられます。

【SatK】

(以下、記事からの引用です。)

「日本には『困ったときはお互いさま』という言葉があります。政府としてもこの精神で、ウクライナからの避難民を積極的に受け入れてまいります」。16日、岸田文雄首相は記者会見でこう述べた。官房長官のもとに「ウクライナ避難民対策連絡調整会議」を置き、民間企業などの受け入れ支援の申し出を受ける窓口を出入国在留管理庁に設けた、と発表。岸田首相は日本の立場を「ウクライナ国民とともにある」と強調した。

一方で、以前から日本で暮らす外国人の中には、正規の在留資格を得られずに厳しい生活を強いられている難民が少なくない。昨年2月に国軍がクーデターで政権を掌握したミャンマーでは、抗議する市民への武力弾圧で多数の死者が出る事態に発展。これを受けて5月、在住ミャンマー人に対する「緊急避難措置」として、在留希望者に対しては就労可能な資格を「柔軟に」付与すると上川陽子前法相が表明したが、今も多くの人が在留資格を得られず、収容・送還におびえる日々を送っている。

(…)

今回の危機を受けた政府の措置や与党の反応を見ていると、日本で暮らす難民・難民申請者と、ロシア侵攻で逃れてきたウクライナ人を明確に区別しようという意図が浮かんでくる。一つは「ウクライナ避難民」という用語だ。

日本も加盟している難民条約上の「難民」は、元々は自分たちの住んでいた国から人種や宗教、政治的意見などを理由に迫害を受けている場合を想定している。岸田首相の16日の会見でも、「難民」ではなく「避難民」という表現が使われていた。

それでは、他国の侵略から逃れた市民は「難民」に該当しないのか。渡辺弁護士は「今のウクライナの状況を見れば、まずは迫害の恐れを確認し、難民としての受け入れを進める必要がある」と話す。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の「ガイドライン12」(16年)では、難民発生原因となる「武力紛争および暴力の発生する状況」は「二つ以上の国家間」における事態も含まれると明記されている。

ならば、なぜことさらに「難民」と「避難民」を区別するのか? 「ウクライナの人たちを難民と認めてしまうと、これまで難民としての保護を十分に尽くしていないアフガン難民やミャンマー難民との対比が明らかになるのを恐れているのでしょう」と渡辺弁護士は指摘する。

(…)

「私が担当している未決着のミャンマー人難民申請者の中には、90年代に来日した方が8人もいます。約30年もその国で生活しているのに、政府が非正規のままに置いているというのは異常な事態だということを自覚してほしい。ウクライナの人たちについても、入管の裁量のもとに置かれた『避難民』というあたかも恩恵のような形ではなく、まずは難民条約に基づく保護の判断をすべきです」

 入管が恣意(しい)的に滞在許可を左右でき、毎年のように死者を出す施設にいつ収容されるかわからない状態に外国人を置く。そんな政策によって、日本社会にどんなメリットがあるのか。