プーチンとのロマンスを罰せられるシュレーダー

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「ガゼタ・ヴィボルチャ」 2022年5月19日 執筆者:Bartosz T. Wieliński
https://wyborcza.pl/7,75399,28469119,pierwsza-kara-dla-schrodera-za-romans-z-putinem.html

ドイツ連邦議会の議員たちが、ゲルハルト・シュレーダーから、元首相として与えられている特権をはく脱しようとしている。ヨーロッパ議会の議員たちは、彼に制裁を科そうとしている。これは、シュレーダーが長年にわたってクレムリンを支えてきたことに対する罰である。

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公金でまかなわれる事務局で秘書や局長が専任で雇用されている、そんな権利を、ゲルハルト・シュレーダーは今週中にも失おうとしている。ドイツ連邦議会の財務委員会に対して、緑の党、自由民主党、社会民主党からなる連立与党の議員たちが申し立てを提出した。このうち社会民主党は、シュレーダーが長年にわたって党首を務め、1997年に政権についた政党である。

連邦議会の決定は、公式には、シュレーダーの元首相としての活動とは何ら関係を持たない。議員たちは、彼に権利を与えられている6か所の事務局のスペースと7名の職員について、元首相がこの特権を総じて利用していないという理由で、彼から剥奪しようとしている。

「彼には、その地位から生じる恒常的な義務はまったくない。それゆえに、職員を雇用したり、事務所のスペースを使用したりするための理由もない」と申し立てには書かれている。

もちろんこれは口実に過ぎない。

ゲルハルト・シュレーダーはプーチンの帝国主義的な政策を擁護してきた

シュレーダーの事務所は現在は活動していない。ウクライナで戦争が勃発した2月24日以降、彼のために働いていた官僚たちは辞任した。アルプレヒト・フンクもその1人である。彼は長年にわたってシュレーダーの事務所の長を務め、シュレーダーのためにスピーチも執筆していた。

フンクが職を辞したのは、元首相がロシアのウクライナ侵攻を非難せず、ロシアのコンツェルンであるガスプロムとロスネフトのための仕事から手を引かないことへの抗議のためであった。それどころか、シュレーダーは、戦争勃発直前にもロシアを擁護し、キーウに対して、厚かましくも紛争を挑発していると非難していたのである。

1997年から2005年にかけてのシュレーダー政権の時代に、ロシアとドイツは経済的・政治的に密接な関係を築くにいたった。ドイツとロシアを結ぶガスパイプライン「ノルトストリーム」の建設が決まったのは、この間のことである。このパイプラインは、ウクライナとポーランドを避けてバルト海の海底に敷設され、両国を結んでいる。

2005年秋に政界から引退してまもなく、シュレーダーはガスパイプラインを建設する企業の筆頭取締役となった。その後、彼は、ジョージアへの侵攻、2014年のクリミア併合とドンバスでの戦争など、プーチンの帝国主義的な政策を公的に擁護してきた。

ウクライナで戦争が勃発したのち、シュレーダーはモスクワに赴いてプーチンと直接会談し、平和を回復するように求めた。しかし、なんの効果もなかった。シュレーダーもその親ロシア的な姿勢を変えることはなかった。

ロシア企業とクレムリンのためのロビー活動の報いを受けるシュレーダー

今後も引き続き、シュレーダーは、元首相としての警護を受け、年金を受給することになる。外遊したり公的な場に出席したりするための経費は、これからも国庫から支出されるであろう。緑の党と自由民主党は、しかしながら、国庫からの経費支出については規程を見直すと予告している。外遊や公的行事にかかわる支出にかんする規程そのものがなくなる可能性もある。

木曜日(5月19日)、ヨーロッパ議会は、政治家に制裁を科すことを求める決議案を採決することになっている。そこには、シュレーダーがやめようとしないロシアの企業とクレムリンのためのロビー活動に対する処罰が盛り込まれることになっている。

制裁は、オーストリアの元外相カリン・クナイスルにも及ぶ可能性がある。彼女の結婚式には、ウラジーミル・プーチンが招かれている。現在、クナイスルはロスネフトの取締役会のメンバーである。彼女もこの職を辞任しようとはしていない。

ヨーロッパ議会の決議案は、EUの外務・安全保障政策上級代表〔外相に相当〕ジョセップ・ボレルに提出されることになっている。提出されれば、ボレルはこの問題を検討に付さなければならない。制裁にかかわる決議には、EUに加盟する諸政府のトップによる全会一致の承認が必要である。現実にそのような決定が下されることは想定しにくい。ヨーロッパ議会の決議案の意義は、したがって、象徴的な次元のものとなるであろう。

日本にも、プーチンと27回も会談して「同じ未来を見て」いた元首相がいる。
「ウラジーミル。君と僕は、同じ未来を見ている。行きましょう。ロシアの若人のために。そして、日本の未来を担う人々のために。ゴールまで、ウラジーミル、2人の力で、駆けて、駆け、駆け抜けようではありませんか。」
(2019年9月5日 ウラジオストクで開催された東方経済フォーラムでの安倍首相のスピーチ https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2019/0905eef.html )
当時もニュースで聴いていて「歯が浮くようだ」と感じたが、今読み返しても、肌に粟が立つほど恥ずかしい科白である。

その後の経緯と現在起きていることをみれば、安倍元首相による対ロシア外交が完全に失敗に終わったことは誰の目にもあきらかであろう。日本の外交は、この失敗を率直に認め、何が間違っていたのかを正しく分析し、深く自省するところから再出発するべきなのである。

しかるに、この元首相は、自らの失敗を反省するどころか、ウクライナでの戦争が始まった3日後にTV番組に出演し、ロシアの引き起こした戦争に便乗するかのように「日本も核シェアリングの議論をするべき」と述べたのだ。同じ番組に出演していた日本維新の会の松井一郎代表は「非核三原則は昭和の価値観」と発言した。

ドイツやEUの動向に照らしてみれば、日本の元首相についても、少なくとも「象徴的な次元で」何らかのペナルティを科されてもおかしくないであろう。

【SatK】