ポーランドのドゥダ大統領、プシェヴォドゥフでの爆発について「ポーランドへの攻撃ではなかった。おそらくウクライナのミサイルである」

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執筆:アガタ・コンジンスカAgata Kondzińska
『ガゼタ・ヴィボルチャ』 2022年11月16日 現地時間12:48発
https://wyborcza.pl/7,75398,29146097,prezydent-duda-o-wybuchu-w-przewodowie-to-nie-byl-atak-na-polske.html#S.MT-K.C-B.1-L.1.duzy

「ポーランドを狙ったミサイルではなかった」と、ポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領とマテウシュ・モラヴィェツキ首相は揃って認めた。プシェヴォドゥフに着弾したのはおそらくウクライナの地対空ミサイルの残骸であり、「北大西洋条約第4条の適用は必要ないだろう」とも述べた。

火曜の15時40分、ルブリン県のプシェヴォドゥフ村の穀物集蔵場に、少なくともミサイル1機が着弾した。爆発で2名が死亡した。この日、ロシアはウクライナに最大規模のミサイル攻撃を行なっていた。

ドゥダ大統領 「これはおそらく不幸な事故だ」

水曜朝、ドゥダ大統領は、モラヴィェツキ首相と会談した。直後に行なわれた共同の記者会見で、2人の政治家は「ポーランドへの意図的な攻撃であったことを示すものは何もない」と認めた。「これはポーランドへの攻撃ではなかった。1970年代のロシア製のミサイルS-300型であった可能性が高い」とドゥダ大統領は語った。

「ロシア側がミサイルを撃ったことを示す証拠はない」と大統領は強調した。他方で大統領は、「多くの点で、落下した砲弾が対ミサイル防衛に用いられたこと、この砲弾がウクライナ軍によって用いられたことを示している」と語った。「ロシアからの砲撃、ミサイルが飛んでおり、さまざまな方向から機動性のミサイルも飛んでいた。おそらくその一部はポーランドの領土内を飛行し、東に向きを変えたので、ウクライナの対空防衛部隊はさまざまな方向に地対空ミサイルを発射した。それらの1つが残念なことにポーランド領内に落下した可能性がきわめて高い」と大統領は説明した。

さらに次のようにつけ加えた。「この紛争全体がそうであるように、今回も、われわれは、ロシア側によって引き起こされたきわめて重大な衝突に巻き込まれた。したがって、昨日の衝突全体の責任はロシア側にあることはまちがいない。」

大統領は、現場検証から、ミサイルに搭載された爆発物が爆発したのではなく、ミサイルの落下の力とミサイル内に残っていた燃料の爆発が重なった結果と考えられると述べた。

以上は暫定的な結論であることを大統領は認めた。ポーランドの捜査班はアメリカの担当者と協力して調査を行なっている。「これがポーランドへの攻撃であったと言いうるようないかなる証拠も痕跡も存在しない。これはおそらく不幸な事故であった」とドゥダは説明した。

モラヴィェツキ首相 「平静を保ちましょう」

モラヴィェツキ首相はまず、軍と警察は最高度の警戒状態にあることを認めた。爆発が起こったプシェヴォドゥフでは、人員が増員されている。

「われわれは不幸な出来事に巻き込まれた。ポーランド市民が亡くなったのだから」とモラヴィェツキは述べた。そして、ポーランドの捜査班はアメリカの担当者と協力していることをあきらかにした。「[EUとNATO加盟諸国の]首相たちとの話し合いのなかでとくに共鳴したことを強調しておきたい。昨日はウクライナ全土に大規模な攻撃が行なわれた日だった。ミサイルのかなりの部分がウクライナの都市に飛来し、その一部は撃ち落された。半数とも四分の三とも言われるが、砲弾の一部は撃ち落すことができず、いろいろな場所に命中した。この攻撃に対抗するためにウクライナ軍は対空ミサイルを発射した。そのうちの1つが不幸なかたちでポーランド領内に落下したということを多くの証拠が示している。」

首相は、死亡した2名の家族に哀悼の意を表明した。「ポーランドは同盟のなかにおり、同盟は機能した」と首相は述べた。「さらに段階を上げて、北大西洋条約第4条を適用することは必要とされないだろう」とモラヴィェツキはつけ加えた。

北大西洋条約の第4条には、次のように記されている。「締約国は、領土保全、政治的独立又は安全が脅かされていると認めたときは、いつでも協議する。」

首相は、国境近くの住民たちに平静を保つよう呼びかけた。兵員が増強され、上空の防備も強化されるだろうと説明した。「この事態に平静に対処しよう。これがこの状況に対するわれわれの応答である」と首相は強調した。さらにロシアのプロパガンダへの注意を呼びかけた。「それがクレムリンの目標の1つだからだ。」

バイデン米大統領 「ロシアのミサイルではないようだ」

火曜の夕刻、AP通信と多くのヨーロッパの政治家たちが、プシェヴォドゥフに1ないし2発のロシアのミサイルが落下したと伝えた。上空でウクライナの地対空ミサイルによって損傷していた可能性があるとも伝えられた。

しかし、水曜朝、ジョー・バイデン米大統領は、次のように述べた。「詳しい調査が行なわれるまえに予断したくはないが、[ミサイルの]軌道からみて、ロシアから発射されたものではなさそうだ。」

AP通信も、さきの自社の報道を修正し、アメリカの情報機関の情報として、次のように伝えた。「初期段階の調査は、次のことを示している。ウクライナとの国境のポーランド側にあるプシェヴォドゥフに落ちたミサイルは、ロシアのミサイルに向けてウクライナ軍が発射した地対空ミサイルである。」

16日朝の時点では、ロシアによるミサイル攻撃がNATO加盟国に向けられた可能性を排除できず、ニュースを見ながら背筋が凍る思いだったが、ウクライナ側の地対空ミサイルによる誤爆であることがほぼ確実となった。大統領と首相が両並びで記者会見を行なうのはあまりないことで、ポーランド政府にとって事態が容易ならざるものであったことを示している。

現地のTVは見ていないのでわからないが、オンライン版の新聞を読むかぎりでは、ポーランドのメディアは市民に「平静を保とう」と呼びかけることに主眼をおき、予断や憶測にもとづくコメントは掲載せず、全体として抑制の効いた姿勢をとっていたように思う。

【SatK】