ポーランドの知識人・文化人による「ウクライナとの連帯とロシアの侵攻阻止を求めるアピール」に寄せて

21日、プーチン大統領は、ウクライナ東部にロシアが支援する勢力によってつくられた「ドネツク人民共和国」・「ルガンスク人民共和国」を「国家」として承認し、この地域に軍を派遣することを指示しました。ロシア軍の派遣は「平和維持のため」ということになっていますが、主権国家であるウクライナに対する、ロシアによる事実上の軍事的侵略です。

ここにいたる経緯と今日の状況は、ウクライナとヨーロッパ、そして世界の現在と将来にとって、どのような意味をもっているのでしょうか?

ウクライナの西北に隣接するポーランドの知識人・文化人が19日、ウクライナと連帯するアピールを発表しました。隣国が直面する危機を、ヨーロッパ全体にとっての脅威として受けとめ、ウクライナの市民と連帯し、ロシアの侵攻を阻止するよう、国際社会に呼びかけています。

ポーランド語で発表されたこのアピールの日本語訳を、みなさんと共有します。


ウクライナとの連帯とロシアの侵攻阻止を求めるアピール

声を合わせて言おう――「われわれはウクライナと共にある!」そして「われわれは戦争には同意しない!」

2014年、ロシアは、ウクライナ領のクリミアを占領し、ドンバスでの戦火を煽ることで、ウクライナとのハイブリッド戦争を始めた。この戦争はすでに14,000名を超える犠牲者を生みだし、150万人の人びとを家から追い出し、ウクライナ国家の状況を不安定化した。これが、ウクライナの「尊厳の革命」、ウクライナの数百万人の住民が、自決権と民主主義とヨーロッパ的諸価値を求めて、自分たちの住む街の通りに出て行なった異議申し立てに対する、プーチンの応答であった。

ロシアの指導者の頭のなかでは、居場所があるのは、隷属し、屈服し、従順な人びとだけだ! だからロシアは、国際的な取り決めや、自らに課せられた義務を踏みにじってきた。そしていま、多くの障害を乗り越えてヨーロッパ共同体に加わるために困難な改革を推し進めているウクライナに、さらなる侵攻と占領で脅しをかけ、ウクライナと世界を恐喝しているのだ。

ロシアの計画はプーチンの帝国主義的な野心を実現するためのものであり、今日までの国際秩序を破滅させるものである。これが実現すれば、ヨーロッパではカオスが支配することになる。そうなれば、モスクワは自らのエゴイスティックな政策を好きなように推し進めるだろう。

ますます多くの国際政治の専門家が、プーチンの現在の政策が1938年のヒトラーの戦略にきわめてよく似ていることに注目し始めている。このヒトラーの戦略からミュンヘン協定が結ばれ、チェコスロヴァキアが分割され、その1年後に第二次世界大戦が勃発したのである。

もしいま、われわれがロシアによるウクライナ占領に同意するならば、われわれは遠からず、さらなる侵略と要求に直面することになるであろう。自由なウクライナを守り、支持することで、われわれは自らのヨーロッパの家を守っているのだ。ロシアはすでに自由なベラルーシを無力化し、それを自分の帝国主義的なイデオロギーの実現のための演習場にしてしまった。これは、プーチンがわれわれに自分のルールを押し付けるのを認めてしまえば、われわれに何が起こるかを予告している。そういうことはわれわれには起こらないと、うそぶくことはもはやできない。

現在の状況は、この地域における唯一の安全と安定の保障は、ウクライナがNATOとEUに加盟することであることを示している。まさにそのことを求めて「尊厳の革命」の英雄たちは闘い、そのために犠牲となったのだ。今日のウクライナの市民たちも、同じことを求めている。地域の平和と安全の名において、われわれもまた、このことを要求する! われわれは、すべてのヨーロッパ諸国民、EUとNATOのすべての加盟国の政府に、ヨーロッパの安全保障圏を速やかにウクライナ、モルドヴァ、ジョージアに拡大することを呼びかける。われわれは、自由なベラルーシを実効性をもって支援することを呼びかける。そうすることによってのみ、ロシアの帝国主義者が自分たちの計画を推し進めるのを阻止することになるだろう。

われわれは全世界の政府に呼びかける――プーチンの破壊的な政策の実現を許さないために、そしてウクライナの領土の一体性と独立を維持するために、あらゆる手段を動員してほしい。

われわれすべてのポーランド人、ヨーロッパ人は、ウクライナと連帯しよう! プーチンを阻止しよう! 民主的な世界、国境の不可侵と市民・国家の自決権の原則の破壊に対して、断固として「否」と言おう! 

署名者:
Agnieszka Arnold [映画監督。イェドヴァブネについてのドキュメンタリーを制作]
Adam Balcer 
Bogumiła Berdychowska [文筆家。ポーランド・ウクライナ関係の専門家]
Justyna Białowąs [作家]
Małgorzata Bielecka-Hołda [編集者]
Adam Bodnar [弁護士、人権活動家]
Maryna i Włodzimierz Bogaczyk [編集者]
Halina Bortnowska [哲学者]
Jarosław Chołodecki [ジャーナリスト]
Iza Chruślińska [社会活動家、文筆家]
Przemysław Czapliński  [文芸評論家、文学研究者]
Anna Dąbrowska [シンガーソングライター]
Tomasz Dostatni OP [ドミニコ会修道士]
Roman Drozd [歴史学者]
Anna Engelking [人類学者]
Przemysław Fenrych  [編集者、社会主義時代の反体制活動家]
Ewa Figel
Władysław Frasyniuk [政治家、社会主義時代の反体制活動家]
Beta Fudalej [俳優]
Grzegorz Gauden  [ジャーナリスト]
Konstanty Gebert  [ジャーナリスト]
Lucyna Gebert  [スラヴ言語学]
Agnieszka Glińska [演出家、俳優]
Irena G. Gross  [文学研究者、文筆家]
Hanka Grupińska  [ジャーナリスト]
Igor Hałagida  [歴史学者]
Hnatiuk Ola [ウクライナ学者、ウクライナ・ペン・クラブ副会長]
Bożena Iwaszkiewicz-Wronikowska  [美術史家]
Krystyna Janda  [俳優]
Witold Klaus  [法学者]
Jacek Kleyff  [詩人、歌手]
Michał Klinger  [正教会聖職者、外交官]
Maja Komorowska  [俳優]
Agnieszka Korytkowska  [映画・劇場監督、文化研究]
Marta Koval  [政治学者]
Sergiusz Kowalski  [社会学者]
Krzysztof Król  [政治家、ジャーナリスト]
Marcin Kula  [歴史学者]
Danuta Kuroń  [社会活動家]
Jarosław Kurski  [ジャーナリスト]
Agnieszka Lipska-Onyszkiewicz
Magdalena Łazarkiewicz  [映画監督、脚本家]
Barbara Malak
Wojciech Maziarski [ジャーナリスト]
Andrzej Mencwel  [文学史家、評論家]
Jacek Michałowski  [元大統領補佐官]
Adam Michnik [ジャーナリスト、文筆家、ガゼタ・ヴィボルチャ紙編集主幹、社会主義時代の反体制活動家]
Jerzy Onuch  [アーティスト、キュレーター]
Wojciech Onyszkiewicz  [歴史学者、社会主義時代の反体制活動家]
Jan Ordyński  [ジャーナリスト]
Ostaszewska Maja [俳優]
Ostolski Adam [社会学者]
Grzegorz Pac  [歴史学者]
Elżbieta Petrajtis-O`Neill [翻訳家]
Marta Petrusewicz  [歴史学者]
Bartosz Piechowicz
Krzysztof Podemski  [社会学者]
Piotr Pogorzelski  [ジャーナリスト]
Paweł Prokop
Danuta Przywara  [社会学者]
Tomasz Rakowski  [人類学者]
Jerzy Rejt  [在ポーランド・ウクライナ人連盟初代会長]
Andrzej Romanowski [文学研究者]
Anka i Wilhelm Sasnalowie  [映画監督]
Adam Sauer
Mariusz Sawa  [元サッカー選手]
Sławomir Sierakowski  [社会学者、評論家]
Mirosław Skórka  [在ポーランド・ウクライナ人連盟会長]
Anna Rosner [歴史学者、ユダヤ研究者]
Andrzej Rosner  [編集者]
Paweł Smoleński  [ジャーナリスト]
Eugeniusz Smolar  [ジャーナリスト、社会主義時代の反体制活動家]
Andrzej Sokołowski  [経済学者]
Krzysztof Sokołowski  [翻訳家、評論家]
Grażyna Staniszewska  [政治家]
Barbara i Krzysztof Stanowscy  [ジャーナリスト]
Jerzy Stępień  [法律家]
Tomasz Stryjek  [歴史学者、政治学者]
Rafał R. Suszek  [物理学者]
Jarosław Syrnyk  [歴史学者]
Małgorzata Szejnert  [ジャーナリスト]
Andrzej Szeptycki  [政治学者]
Środa Krzysztof [哲学史家、文筆家]
Magdalena Środa [哲学者]
Joanna Tokarska-Bakir  [人類学者]
Maria Topczewska  [言語学者]
Toruńczyk Barbara [編集者、文筆家]
Mirosław Tryczyk  [哲学者、文筆家]
Magdalena Tulli  [小説家、翻訳者]
Piotr Tyma  [歴史学者]
Nedim Useinov [イスラム学・中東地域研究]
Marek Wilczyński  [歴史学者]
Rafał Wnuk  [歴史学者]
Michał Wojcieszczuk
Anna Wolff-Powęska  [思想史家、ポーランド・ドイツ関係]
Ludwika Wujec  [物理学者]
Krystyna Zachwatowicz-Wajda  [俳優、故アンジェイ・ワイダ監督の妻]
Mariusz Zajączkowski  [歴史学者]
Paweł Zbierski  [文筆家]
Maria Zmarz-Koczanowicz  [映画監督]
Komitet Obywatelski Solidarności z Ukrainą [ウクライナとの連帯市民委員会]
Związek Ukraińców w Polsce [在ポーランド・ウクライナ人連盟]

翻訳者:小山 哲
訳者による解説

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