日本学術会議への政治介入に対する抗議声明

2020年10月4日

日本学術会議への政治介入に対する抗議声明

自由と平和のための京大有志の会

 わたしたち「自由と平和のための京大有志の会」は、菅義偉首相が日本学術会議の新会員に推薦された者の内6名を任命拒否したことに対して、断乎として抗議します。この任命拒否に対する正当かつ合理的な理由を明らかできないのであれば、首相は6名を即時任命すべきです。

 わたしたちは、今回の出来事を、日本学術会議だけに関わることではなく、安倍前政権以来続く、国家権力による政治介入を象徴する出来事だととらえています。官邸から大学への政治的圧力は、近年確実に強まっています。総長選考会議による不透明な総長選考が、京都大学や東京大学で問題になっています。官邸や文科省に忖度できる学長・総長の「ガバナンス」が、官邸主導のもとで確実に強化されていることを、大学の構成員であるわたしたちは日々感じずにはいられません。

 首相から日本学術会議に対してだけでなく、官邸から大学執行部へ、さらには大学執行部から各部局へ「ガバナンス」が貫徹されていくことで、現場の自立性や自治が崩壊しつつあります。それによって、より下位にある組織の傀儡化が進むとともに、その下位の組織はただ忖度か沈黙かを迫られる状況になっています。下位にある組織や人を選別し、その選別した者同士を互いに争わせ、分断させ、劣化させていく。安倍政権、菅政権の本当の意図はそこにあると評さざるをえません。こうした組織で生まれる学問や教育は、かつて日本が辿った道と同じように、いかに「国策」に寄与するか、いかに国家のために戦争で死ぬ若者を動員するか、という目的に従属するものになっていきます。

 首相による任命拒否は、人文・社会科学系の研究者ばかりでした。また、新聞報道によれば、「安全保障関連法に反対する学者の会」や、わたしたち「自由と平和のための京大有志の会」の声明書の賛同者だったと言われています。これこそ、安倍前政権が官邸主導で進めてきた、軍事研究を含む「実用的」研究偏重や思想・学問弾圧であり、これをそのまま菅政権が踏襲したものにほかなりません。学問・研究はいかなる分野であれ、それ自体存在と価値を保障されるものであり、国家権力でさえ、学問の自由を侵害することはできません。菅首相の対応は、日本学術会議に介入することで、敗戦後以来、戦争に対する痛切な反省から生まれたこの自由の尊重を踏みにじろうとするものです。

 日本学術会議は、1949年の日本学術会議発足時に次のような「決意表明」を発表しています。

「われわれは、日本国憲法の保障する思想と良心の自由、学問の自由及び言論の自由を確保するとともに、科学者の総意の下に、人類の平和のためあまねく世界の学界と連携して学術の進歩に寄与するよう万全の努力を傾注すべきことを期する。」(http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/01/01-01-s.pdf

 今回の出来事において、ひとりひとりの科学者・研究者が自らの良心に基づいて、いかにして学問や研究を通じて世の中に貢献したいのか、そのための理想的な組織のあり方とはいかなるものなのかが根底的に問われています。学問分野や思想的、政治的な立場を問わず、学問や研究に従事している者同士が、「学問の自由」というただ一点を擁護するために手を携え、それを侵害する人々から学問を守っていくことは、過去と未来の社会に対する責任です。すべての大学人と市民に対して共に抗議の声を挙げることを訴えます。