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スピーチ原稿集

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「自由と平和のための京大有志の会」メンバーがおこなったスピーチ原稿を掲載しています。
スピーチのためのメモに基づいた内容ですので、実際のスピーチとは異なるところもあります。


☝2018.12.19 京大集会「踊らされるな、自分で踊れー大学の今とこれからを語る集いー」@京都大学本部構内法経第七教室(小山哲)

 みなさん、こんばんは。文学研究科の教員の小山です。「自由と平和のための京大有志の会」の発起人の1人です。

 「自由と平和のための京大有志の会」は、いまから3年前の、2015年7月に発足しました。わたしたちはなぜこの会を創ろうと考えたのか、その当時のことを振り返ると、2つの問題が背景としてありました。

 ひとつは、安保法制です。安倍内閣は、憲法の解釈を変更して、集団的自衛権を容認する閣議決定を行ないました。この決定にもとづいて、2015年の5月から9月にかけて、国会で安保法案が審議されました。さまざまな問題点が指摘されたにもかかわらず、この法案は強行採決されました。わたしたちは、安保法制は日本国憲法第9条に違反しており、アメリカが行う戦争に日本が加担する可能性が高まると考えて、大学で教育・研究にたずさわる立場から、これに反対する声をあげたいと考えました。

 もうひとつは、同じ2015年の6月に文部科学省が出した通達です。そのなかに、教員養成系や人文社会系の学部・大学院の組織を改編して、社会的要請の高い分野に転換するように求める内容が含まれていました。わたしたちは、財界や政権の近視眼的な意向によって大学における教育や研究のあり方が歪められることに危機感を抱き、この点でも反対の意思を示したいと考えました。

 この2つの問題には、共通する点があります。ともに、権力の中枢にいる集団が、ひとつの方向に向かう決定を下し、それが上から降りてきて強行されるという点です。現場でどれほど多くの人びとが反対しても、いかに多くの問題点が指摘されても、権力の中枢にいる側は真剣に向き合って議論しようとせず、適当にごまかして批判の声をやりすごし、反対を無視して強行しようとする。現在、沖縄の辺野古の基地建設をめぐって起こっていることも、これと同じ構図です。

 そして、こういうトップダウン方式のミニチュア版が、京都大学のなかでも繰り返されています。最近では、立て看板の規制がこのやり方でした。大学の執行部で立て看板を規制することが決められ、教授会には報告事項となって降りてくる。審議事項ではないので、部局の個々の教員の目には、意思決定に関与する権限がない問題と受けとめられ、教授会で十分な議論がおこなわれることがないままに通ってしまう。吉田寮の問題も、大学当局は、同じやり方で処理しようとしています。

 トップダウン方式に対抗するには、どうしたらよいのでしょうか。

 ひとつは、「あきらめないこと」ではないかと思います。「上で決めたことだし、下から反対しても、いまさらなにも変わらないさ」とあきらめると、理不尽なことがそのまま通ってしまい、それが積み重なっていくと、ほんとうに引き返すことができなくなります。

 もうひとつは、「つながり合うこと」ではないでしょうか。「有志の会」では、軍事研究の問題、立て看板規制の問題、吉田寮の問題など、その都度、声明をだして、意見を表明してきました。それなりに反響があった場合もありますが、小さな会ですので、単独ではやはり限界があります。それぞれの現場にいる人たちが、自分たちの持ち場のなかで、自治の文化をもういちど建て直す。そのうえで、自治的にものごとを決めていくたくさんの小さな集団が、ゆるやかなネットワークでつながり合って、上からの理不尽な押しつけに異議申し立てをする。トップダウンには、幅広く連帯してボトムアップで向き合う。迂遠なようですが、結局のところ、そういうやり方しかないように思います。この集会も、そのようなネットワークに支えられた、ボトムアップの試みだろうと思います。

 「自由と平和のための有志の会」では、「ひろば」という名前のもとに、いろいろな企画を主催してきました。京都大学の学生や教職員だけでなく、学外の市民の方にも開かれた催しです。そのような「ひろば」の一環として、今年に入ってから、「本を読む会@吉田寮」を3回開催しました。吉田寮新館の会議室をお借りして、毎回、1冊の本をとりあげて、自由に語り合う集まりです。参加者は多くて20名程度で、こじんまりした会ですが、参加した市民のみなさんからは、これからも吉田寮でこのような会を開いてほしいという希望をうかがっています。大学の教室を使うこともできますけれども、吉田寮には、学外の方でも、くつろいで自由に議論ができる、独特の雰囲気があります。こういう開かれた空間があることは、京都大学にとって、たいせつなことだと感じています。

 さきほど、小さな集団がゆるやかにつながり合って声をあげる、ということを申しました。つながり合ってネットワークをつくるためには、「つなぎ役」が必要です。今回の集会は、主催者である吉田寮自治会の呼びかけがあって、可能となりました。むずかしい状況のなかで、「つなぎ役」として、大学の今とこれからを語る会を企画し、実行した吉田寮自治会のみなさんの勇気と努力に敬意を表したいと思います。

 どうもありがとうございました。